謎のデブリ
月からのスイングバイを終え、周回軌道上に復帰したダコーア号は静かに修正噴射を繰り返しながら、順調に高度を下げて大気圏突入に備えていた。そんな中、最初の異常に気づいたのは副長のダンカン・カヤロバであった。
「おい、レーダに何か反応があるぞ」
当初、船長であるピス・カリ・タチオは副長の見間違いと判断し、気にも留めていなかったが、
「このままだと、この船の軌道上にあるから、衝突する可能性があるぞ」
というダンカンの言葉でようやく重い腰を上げた。
「なわけないだろ、スペースデブリはスプ暦*180年代に一掃されたはずだろ」
「でも、小惑星帯から紛れ込んだのかも」
「だったら、A.シローツ記念宇宙センターから警告があるハズだろ」
「でも、実際、映ってるし・・・。」
確かにスクリーンにはちょうど人間大の物体が表示されていた。副長のいうとおり、このままではこの船と衝突する危険性がある。
「よし、軌道変更、X:30 Y:20 Z:12に修正。速度120m/s減速!」
5分後、なんとか軌道修正が終わり、ほっと胸を撫で下ろしている二人に新たな信号が届く。
「規則性信号をキャッチ!」
おいおい、やっと2年ぶりに火星から地球に帰還できるというのに今度はなんだ?ウンザリしながら、ピスは信号分析を試みる。なんとその信号源は先のデブリであった。
「どうやら、音声信号が電波に変換されたもののようだ」
「シッ・・・!」
そう言うダンカンの言葉を制しながら、ピスは変換された音声に耳を傾ける。
「ピーガガガ・・・そうそ・・マジだっ・・コンレーの・・コマムーは・・・イニー・・ツーイキで・・・ガガガ・・ナルアーを・・ザザザ・・ロベンロベ・・ツェーマンで・・ザーッ・・パクワンがシーボを・・・もんしなに・・プレゼ・・・ノネーバシーニィーだっつの!gyはは」
ピスとダンカンは無言のまま、船の軌道を当初の軌道へと戻したのだった。