エントリ再放送:書評


原ケルスス教授と空中の蜜  奇想手帖シリーズ(2)

原ケルスス教授と空中の蜜  奇想手帖シリーズ(2)

著者/出版社からのコメント
被害者は全員宇宙人!?  
またまたあの二人が帰ってきた! 支離滅裂奇想天外痙攣的ボキャブラリーをまくし立て、無作為単語の羅列から事件の真相を解き明かすフリーの天才外科医「特殊臓器探偵」こと原 桁朗"虚"授と南極の凍土から発掘された絶対危険美少女サイコパス「症例77号」(通称ナナちゃん)の超絶殺人ワザが冴え渡る!!果たして、殺されたのはホントに異星人たちなのか? 暗躍する古代アボリジニ殺人サイボーグ集団、極小ロンゴ・ロンゴの細胞小器官化計画の陰謀とは? ノンストップアクションミステリーSFファンタジー:奇想手帖シリーズ第二弾、ここに登場!

読んだ。ネタバレを含むので以下続きをば。
基本的にくだらないが、まず、伏線のはり方が問題だ。だいたい、最初に被害者の肉体的特徴が人間のものではないと断言しておきながら、それが加害者による改造だったという結末はいかがなものか。ミスリードならまだしも、作中の人物にソレを語らせながら、実は違いましたっていうのはナシだろう。しかも、肉体的改造を受けたあとでも、実は被害者は仮死状態で、ムクっと起き上がって被害者自身が真相を語り始めるというのはあまりにも馬鹿にしすぎている。
あと、警察組織に犯人の手下があんなに潜入出来るわけがない。どうやって派出所レベルで団員を2億人紛れ込ませるんだか。そもそも、団員の数が日本の人口より多いってムリありすぎる。話の核である極小ロンゴ・ロンゴをお米に文字を書く人が作っていたというのも荒唐無稽すぎる。
あと、キャラクター設定もいい加減すぎる。主人公が古代の常在菌に感染し、多重人格的離人症を患ったまではいい(ほんとは良くないが)。しかし、離人症を利用して空中から現場を俯瞰することができるっていう設定は無いだろう。作者は幽体離脱離人症を取り違えているに違いない。しかも、トゥーレット症候群を併発しているからと、推理と無関係な言葉が結合され、新たな思考回路が開かれるっていう説明はヒドすぎる。トゥーレット症差別だと糾弾されても仕方ないだろう。助手のキャラクターも不自然だ。7000千年も凍土に埋もれていたのに*1後遺症が「他者の生理学的電気活動を視覚化することができる」って何だ。後遺症でもなんでもない。そのうえ、意識の封印を解く鍵がきゅうりのキュウちゃんにしか含まれない栄養素という設定は読者をナメてんのか。だいたい、無闇に人が死にすぎるし、その大半がヒロインの手によるものってのはどうなんだ。で、挙句の果てに、主人公が実はウェルケトン尿症も患っているために唾にシアンの50倍の毒が含まれていて、推理を述べてる間に犯人に唾が飛んで目に入り、犯人が死ぬという結末も全然納得いかない。
悪いことは言わない。これから読もうとしている人には他の本を読むことをお奨めする。


評価:★★★★☆
★★★★★
傑作。

*1:普通死んでミイラ化してるつーッの!