唐突に始めてみる

これで5回目だ。
うんざりしながらドアをロックし、駐車場から夕暮れの日差しに顔をしかめながら玄関口へと向かう。しかし、玄関の自動ドアに近づきながら、いつもと様子が違うことに気づく。さっきまでは、どうせまた徘徊老人がセンサーに触れたのだろうとタカをくくっていたが、その一方で奇妙な不安にも駆られていた。
その不安は自動ドアが作動していないことで、より強固なものとなった。
「すいません、はてな警備保障サービスですが・・・」
重い自動ドアをスライドさせて作った隙間からホールに向かって叫んだ言葉が空しく響く。いつもなら、愛想良く対応してくれる受付の女の子もいないようだ。