Akogina Sirouts博士を迎えて - 新春特別講演

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小池「なるほど、つまり生態的なアフォーダンスではなく、社会的なアフォーダンスが存在していると?」
Sirouts「そうですね、まぁここでは"社会的な"アフォーダンスというよりも、コミュニケーション・アフォーダンスと呼んだほうがいいかも知れません。」
小池「コミュニケーション・アフォーダンスですか?」
Sirouts「そうです。我々は社会的動物ですから生活圏には常に他の個体が存在するんですね。そのような生活圏では他の個体たちとお互いに協力し合っていくことが必須となります。」
小池「あー、そこでコミュニケーション能力が必要とされるわけですね。」
Sirouts「はい。サルから進化した我々は原始的なアフォーダンスが支配するようなジャングルでも草原でもなく、そのような外界からある程度 隔離された、「コミュニティ」内で生活しています。このコミュニティ内で生き抜いていくには、肉食獣から隠れたり逃げたりする能力よりも、他の個体とのコミュニケーションをとっていく能力が問われるわけです。」
小池「ということはギブソンの言うところのアフォーダンスよりも、コミュニティ内において機能する、新しいアフォーダンスが我々の行動に強い影響を与えているということになりますね。」
Sirouts「確かに従来のアフォーダンスも我々には有効ですし、現在でもそのルールに則って私たちは行動しています。しかし、コミュニティ内で生活することを選択した社会的存在としての我々にはもっとクリティカルなルールが発生した と考えるほうが良いでしょう。」
小池「それが博士の仰る、"コミュニケーション・アフォーダンス"なんですね?」
Sirouts「そのとおりです。」

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小池「では具体的にコミュニケーション・アフォーダンスについてご説明願いないでしょうか?」
Sirouts「そうですね、やはりここでは例を挙げて説明したほうがこの会場にいらっしゃる皆さんにもご理解されやすいと思いますので。
では、まず日本人のみなさんが利用される頻度の高い、コンビニで買い物をするシチュエーションで考えてみましょう。仮に袋に入れなくても済むような物を買ったとします。このような場合、日本のコンビニでは会計時に袋の必要性を店員が客に確認するんですよね?」
小池「えぇ・・・まぁ、そうですね。」
Sirouts「その場合、店員は主に二つのアプローチで客に袋の必要性を問うことが出来ます。つまり店員の言語的アプローチとして『袋はご利用になりますか?』と『シールでよろしいですか?』の二つが存在するわけです。ここまではよろしいですか?」
小池「・・・はい。」
Sirouts「で、この二つの言語的アプローチは当然、実質的に同じ質問であることは明白です。しかし、コミュニケーション・アフォーダンスにおいて、この二つは全く異なるアフォードを客に提示しているのです。」

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小池「私には同じように聞こえるのですが」
Sirouts「確かにこれらは日常的な会話の一部ですから、大半の日本人のみなさんにはこの二つの差異はわかりにくいかも知れません。しかし、これら二つが誘導する客の行動は全く異なるものになります。まず『袋をご利用になりますか』というアプローチに対して袋が必要な客は肯定の意思を示すだけで良いのですが、必要性を感じない客はむしろ袋の必要性を否定するリアクションを起こす必要があります。逆に後者の『シールでよろしいですか?』というアプローチではこの構図が反転します。つまり袋を必要とする客はシールではなく袋に商品を入れてほしい旨を伝えなければなりません。」
小池「では、次のように考えてよろしいでしょうか、どちらのアプローチの場合でも店員の提示するプランと客の意思が一致するかどうかで客のリアクションが変化すると。でもこの場合、客のリアクションは肯定か否定かという違いでしかないような気がするのですが・・・。」
Sirouts「コミュニケーション・アフォーダンスにおいては、肯定的リアクションと否定的リアクションにおける行動コストは明確に異なります。」
小池「行動コスト・・・?」
Sirouts「では、その行動コストについて簡単に説明します。」

<まだまだ続く>