ホールではきれいに彩られたリノリウムの床がエレベータホールへと続いている。受け付けのカウンターはもぬけの殻で、ロッカー脇の事務室にも人の気配は感じない。いないのは職員だけではなく、ホールのソファで、話し込んだり、うつらうつらと船をこいでいる入居者の老人たちも見当たらない状況に自然と手が特殊警棒へと伸びる。