恥丘少女アコギュナ

「エントリの内容なんて人それぞれ感じ方が違うのに同じようなブ米ばかりが並ぶ。何故だ?」
「みんなの意見に従ったほうが楽やから・・・?」
「ネガティブな感情ばかり垂れ流すのに、いまだに痛いニュースが持て囃される。何故だ?」
「誰かを蔑んだり、憎んだりしていたほうがココロが楽やから?」
「コピペまがいのまとめ記事に100も200もブクマがつく。何故だ?」
「とりあえずブクマしとけば楽やから?」
「プライベートモードの日記のブクマタイトルがちゃんと修正されてないのに、みんな放置している。何故だ?」
「誰かが直してくれると期待してるほうが楽やから?」
「ブ米でIDで問いかければいいものを、矢印で問いかけるのは何故だ?」
「IDをいちいち書くより楽やから?」
「わざわざ複垢のプライベートモードでネガティブブクマするのは何故だ?」
「そのほうが気兼ねなく人を貶めることが出来て楽やから?」
「メタブクマを繰り返して優越感ゲームを続けるのは何故だ?」
「自分が誰かより優れているという気持ちは楽やから?」
はてなスターで星を付けるだけで済むようなエントリをわざわざブクマする。何故だ?」
「誰かと感情を共有してるようで気が楽やから?」
「人が好き好むモノに対して、とやかくクチを挟みたくなるのは何故だ?」
「自分と人とは違うんだという安心感があると生きていくのが楽やから?」
「エントリのオチにしなもんを持ってくるシナ千代。何故だ?」
「小難しいオチを考えるより簡単にはてなユーザのリアクションが得られて楽やから?」
「50%の完成度でサービスを世に出す。何故だ?」
「サービスがユーザに合わせるのではなく、ユーザがサービスに合わせて変容してくれるので、提供する側としてはスゴク楽やから?」
「このエントリにはオチがない。何故だ?」
「え・・っと、そのほうが楽やから?」
「・・・。」
ウンコーヽ( ・∀・)ノ●
[安易なシモネタ楽やから]

東京メトロの怪

いやー今年もねぇ、こーやってみなさんとこーゆーお話が出来る時期になりましたねぇ〜
時が経つのは早いもんで・・・。
あーそーですねー、せっかくですんでもうこの話を解禁してもいいかなぁ〜なぁんてね、思ってるんですが・・・。
あれは、んーそーだなぁー今年の8月初旬くらいだったかなぁ、仕事でね、後楽園へ行くことになったんですよ。
あたしゃ都会に慣れてませんからねぇ、あーでもねぇこーでもねぇと現場への道順をあらかじめ路線検索で調べて現場へ向かってたワケです。
したらば検索結果で、地下鉄使えって出たもんだから、あたしゃいやーな予感がしたんですね、ハイ。
うわー嫌なの出ちゃったなぁー地下鉄ってやつぁ、わかりにくくてどーもいけない。でもしょーがないんだ、検索結果として出ちゃったんだから。
んなもんだから不慣れながらも代々木上原から千代田線に乗り込んだんですね、ええ。
またその日が猛暑だったもんだから、冷房がありがたくってねぇ、こー座席に座って、いつの間にやらうつらうつらとしてたんですよ。
そーですねぇ時間にして4,5分くらいかなぁ、こーうつらうつらしてるとね、こー聞こえるんですよ、明治神宮前明治神宮前ってね。
あーそーいやー明治神宮は参道にあたる表参道が代々木上原側からだと明治神宮より先に来るから、乗り換え駅の表参道までまだ一駅あるなぁ〜なぁんて、こーうつらうつらしながらぼぉーっと考えてたんですね。
んで、ふぅ〜っと気がつくと、とおぉくの方から「赤坂〜赤坂」って聞こえるんですよ。
んなわけないですわねぇ、普通。さっきまで明治神宮前だったわけですから。あーオレ疲れてるのかなぁ、聞き間違えかなぁって考えてたんですけど、どーもそーじゃない!
どー考えたって乗り過ごしてんだ。
あたしゃこのときばかりはぞぉ〜っとしましてね。
冗談じゃない!やばいやばいやばい、助けてくれぇ〜乗り過ごしたぞぉ、時間に遅れちまうよぉってんで、こー必死(しっし)に路線図を見上げたんですね、ええ。
したらば、国会議事堂前って文字が見えたんですよ。
事前に検索してた時にね、経路候補として国会議事堂前で乗りかえるってのもあたしゃ目にしてましたんでね、偶然なんですが。
地獄にホトケたぁまさにこの事だ、あー良かった良かった助かったぞぉってんで、そこで急いで乗り換えたんですよ、ええ。
そこは確かに「国会議事堂前」でした。いやぁ今にして思えば、アレが始まりだったんですがね・・・。
んで、あとは南北線から「後楽園」に向かえばいいやってんで、トボトボと「国会議事堂前」駅の地下通路を歩いてたんですよ、南北線に乗り換えるためにね、ええ。
したらば、やたら歩くんだ。こー地下鉄表示に従って歩くんだけど、どーも遠い。あれおかしいなぁやけに遠いなぁなんて思いながら歩いてると後ろからふぅ〜っとこれまた地下鉄特有の生ぬる〜い風が吹いて来るんだ。
あーやだなぁーたまんねぇなぁーなぁんて思いながらも、そうこうするウチやっとこさ着いたんですね、ハイ。
おーここかぁてんで、フッっと駅名見上げてみたらば、
溜池山王
ってあるんですね。
あれおかしいなぁオレ歩き疲れて幻が見えてんのかなぁ、んなハズないよなぁと思いながらももう一度確かめてみたんですよ、ええ。
で、見上げてみると
溜池山王
あたしゃ、このときふぅ〜意識が遠のきましてねぇ・・・
まぁ結局、クライアントとの待ち合わせには間に合ったんですが。
 
・・・そんな、ややこしいおハナシです。
 
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朝の連載小説 超光速伝達物質 - ボラギノール <第一回>

博士「ちょ、ちょ、U所員、ちょっと!!」
U所員「またぁ、なんですかぁ、博士〜」
博士「ちょ、おま、反応うしーぃー、ちょぉ聞いてよ、またスゴイもんつくっちった、めがねくもっちゃった!」
U所員「なんでそこでエンゾー師匠なんすか、世代限られすぎですよ〜」
博士「いいからいいから、ちょっとコレ見てって」
U所員「うわぁー、なんかイヤーな予感がするんですけど・・・なんか以前同じよーな展開で大事故が発生したよーな気が・・・」
博士「もう、そんなこと言わずコレ見て、ほら!」
U所員「ん?なんです、これ?白い錠剤みたいですけど・・・?」
博士「説明しよー!これは脳内の情報伝達を担うあらゆる脳内物質の代替となり、超アフィン変換を利用することにより光速の1.5倍の速さで神経間のパルス伝達を可能とさせる物質である。どー、すごいっしょ?」
U所員「え、えーっと・・・具体的に何が出来るんですか?」
博士「だーかーら!脳の情報処理能力を超スピードアップできんの!」
U所員「マジッすか!じゃぁ、時の流れがゆっくりに見えたりして、弾丸をあらゆる方向から観察したり、掴んでみたり、あとクロックアップとか言って、人より早く・・・」
博士「U所員・・・、おーーーい、U所員、ねぇ・・・おーーーいい、Uしょいーーーーーん!!」
U所員「んでもって、そのうち超高速に動くうちに進行方向は青白く、後方は赤橙色に見えるように・・・、え、なんか言いました?博士」
博士「あのぉ・・・、せっかくの妄想中すまんが、このクスリの薬効はある脳の一部分に限られるんじゃ・・・」
U所員「一部分??」
教授「そうじゃ、一部位だけなんじゃ」
U所員「じゃぁ一体、どの部位をクロックアップさせるんですか?」
教授「問題はそこなんじゃ。U所員は人間の脳が機能ごとにモジュール化されているという説は知っておるな?」
U所員「言語野とか運動野ってやつですよね?ペンフィールドが行った、てんかん患者の開頭手術の実験とか有名ですよね。あと皮質におけるコラム構造の特異的な刺激応答とか有名ですね」
教授「そうじゃ、そこでワシもいろいろと調べておるウチに、最近、脳の中でまた新しい機能部位を見つけたんじゃ」
U所員「え、すごいじゃないですか!?それはどーゆー中枢なんですか!?」
教授「ひとよんで、"安い豚肉中枢"じゃ」
U所員「"豚肉中枢"!?」<つづく>

朝の連載小説 超光速伝達物質 - ボラギノール <第二回>

教授「つまりじゃ、高度な抽象化能力を手にした我々人類はその進化の過程においてさらなる飛躍をしたんじゃ」
U所員「それが"安い豚肉中枢"ですか?」
教授「ふむ。」
U所員「しかし、抽象化能力は我々が言葉を思考の道具として手に入れた時点で既に獲得されたモノで、特に目新しさは無いと思うのですが・・・」
教授「そこがおぬしの思慮の浅さじゃ。つまり、我々人類は集団生活によって生きていくことを選択した代償として、他者とスムーズなコミュニケーションを図る能力を必要とされたんじゃ。しかし、それまで人類が獲得した抽象化能力や言語能力をはるかに凌駕したモノがコミュニティ維持には必要なんじゃ」
U所員「それが"豚肉中枢"なんですね」
教授「まさにそうじゃ!」
U所員「ということは・・・ま、まさかコレを飲めば・・・!?」
教授「ふふふ、やっと気づいたようじゃの・・・そう、コレは”非コミュ”の特効薬なんじゃッ!!」
U所員「な、なんだってぇエーーーッ!!?」<つづく>

朝の連載小説 超光速伝達物質 - ボラギノール <第三回>

教授「つまりじゃ、どんなつまらない題材にも話題性を見出すのがコミュたちの特性、ということはそのどんなものにも話題性を見出す言語能力の中枢こと"豚肉中枢"を刺激・クロックアップすることにより、コミュと同じようにスムーズな会話が出来るようになり、もう「・・・」のような話題の枯渇に困ることはなくなるんじゃ!」
U所員「・・・ということは非コミュは"豚肉中枢"が不活性だと?」
教授「残念ながらワシの研究成果はそう述べておる」
U所員「では、このボラギノールはその非コミュ問題を一気に解決するわけですね」
教授「そういうことじゃ」
U所員「では、早速・・・、ってコレって動物実験とかは?」
教授「なんせ人間にしか効果が認められない物質だからの・・・代謝性では問題ないことは確認してるのだが」
U所員「では、今回も有志を募って・・・」
教授「いや、ここに既に良いサンプルがおる・・・」
U所員「まさか・・・今回も・・・」
教授「その、まさかじゃ」<つづく>

イナゴを哀れむ歌 - ドン・クライ・ロンリーホッパー

「なるほど、それで我が社へお越しになったと?」
「ええ、まぁウチではそのような調査がメインですので・・・」
「しかし残念でしたね。どうやら無駄足を踏ませてしまったようで」
男は人の良さそうな、満面の笑みで頷いた。
浦賀惣一。29歳。大学時代にサークルのメンバーとともに会社を創設。順調にその会社は成長し、今のITコンサルティング会社『ネットウォーキング』社に到る。
その創立者にして社長である浦賀は再び窓から街を見下ろす。60階から見下ろす夕暮れの街はまるで箱庭のようだ。
「いやそうでも無いですよ、人当たりが良さそうな相手が意外や意外、真犯人てことも」
振り返った浦賀の目に笑みはもう無かった。
「資料をご覧になったでしょう?我々に不正をする余地は無い」
タバコを灰皿に戻すと、浦賀は俺の隣に歩み寄った。
「それに・・・あなたは私が見る限り賢そうな人だ。私が言いたいこと、分かるでしょう?」
再び笑顔を取り戻した浦賀はそうにこやかに俺に問いかける。しかし、眼鏡の奥で光る目に笑みは戻っていない。
「それは私どものクライアントが判断することです。」
「・・・そうですか。では我々もそれなりの対応をしなければならない」
「それなりの?」
俺の問いには答えぬまま浦賀は俺から離れ、窓に顔を近づける。
これ以上は何も出そうにない。あきらめて俺がソファから鞄を取り上げようとした時、
「ところでその鞄、何が入っているんです?ネット不正調査の資料の割りにはやけに重そうだ」
「今の時代、クライアントと案件には事欠かないもので・・・」
「なるほど、我々のような無実の企業の資料で溢れているわけだ」
今度は俺が奴の問いを無視する。
「・・・では、資料だけ回収させて頂いて失礼します」
「・・・」
浦賀は興味なさそうに夜の帳が降りつつある街に顔を向けたまま、手を振った。
そこで、ある違和感に気がついた。タバコを吸い終え灰皿に吸殻を置くときも、手を振ったときも奇妙なことに浦賀は利き手の"手のひら"をこちらに見せないようにしていたのだ。
「あのぉ、浦賀さん・・・」
足音を立てないように浦賀の背後に歩み寄る。
「まだ、何か・・?・・な、何をする、君!」
俺は浦賀の右手を掴み上げる。
カフスボタン・・・ほつれてますよ?」
素早く腕を引き離すと浦賀は逃れるようにして俺から離れた。
「もう、用は済んだんだろ!早く帰ってくれないか!?」
再び鞄を床に下ろし、鞄のカギを開く。
「な、何を始める気だ・・・?さっきから君は!?・・・早く帰りたまえ」
「こーゆー噂聞いた事ありませんか?ネットイナゴにはひと目で分かる特徴があるという噂をね・・・」
浦賀の背中がビクリと動く。しかし振り向こうとはしない。
「何が言いたいんだね?」
カチャリと音がする。浦賀がテーブルに眼鏡を置いた音だ。
ネットイナゴの体には罵倒タグが刻まれているという噂があるんですよ」
浦賀の背広が急激に盛り上がり始める。やはり・・・奴だ。
「調査屋さんらしくもない。そんな根拠の無い噂を信じるなんて・・・ね?」
鞄を覗き込み、すぐに使用できるかゲージを確認する。
「[粉屋とロバ]・・・あなたの右手に刻まれた文字列だ」
ブチぃブチぃッ。何かが裂けるような音がする。浦賀の背中から半透明の薄い板状のものが2枚スーツを破り突き出ている。まるでソレは・・・翅のようであった。
「お、オレもキぃたこトがあるゼェええ・・!人間ノ癖にィ俺らに素手デ歯向かゥ奴が居るってウわサをなぁアア!」
俺が飛びのくのと奴の強力な後ろ肢がソファごと破壊するのはほぼ同時だった。
「ばレちゃぁショうがネェ・・!アンタには消えてモらウゼェ・・!!」
ガキンッ
金属音が目の前に響く。奴が・・浦賀で”あった”モノが強力な顎で俺の顔を齧ろうとした。
「チッ!スバシコイ調査屋さんだぁ!」
くるりと向きを変えると、人間では到底できない速さで奴は跳びながら近づいてきた。
グシャッ!
鈍い、何かが潰れたような音が応接室に響く。小型車なら軽々と押しつぶすことのできる前足を床から引き剥がす。満足そうに奴は顎をかき鳴らした。
しかし、奴の無表情な複眼が驚きできらりと光る。
「ナ、何故・・・!」
草のニオイが部屋に充満する。奴の緑色の体液が腹部から迸る。
「ソ、それはイケダ銃・・・!」
「スマンね、素手でなくて。俺の鞄に入っているのは資料だけじゃないのさ」
「マ、まサか、イナゴハンターという人間のウワさは・・・お、お前のことk」
シュン!
馬の頭ほどの塊が床に落ちる。文字通りクライアントに確認させるため、それを回収する。
「これで108匹目・・・」
俺はいつも通り、ハント完了の証に割れたテーブルの上に名刺を置いた。

ネットイナゴ駆除
イナゴハンター:阿漕 狂介

はてぶの

そこは見知らぬ男女がいるマンションの一室のようだった。
「おっ、また出てきたぞ」
眼鏡をかけた20代くらいの男が無表情にこちらを見つめながら呟いた。
(ここは・・・?)
事態が把握できず、呆然としてると部屋の正面に膝を抱えて座っていた少女が話しかけてきた。
「アンタも死んだの?」
「えっ・・・あっ・・」
女は僕の答えを待たずにすぐに興味なさそうに自身の茶髪を掻き上げながら僕から視線を外した。
おかしい。ここは一体なんなんだ。だってさっきまで僕は本厚木駅のホームに(正確にはホーム下の線路に。これは後述する)居たはずなのだ。
「どうやらこれで終わりらしいね」
今度は部屋の中央に立っていたヒゲを生やし、黒ぶち眼鏡をかけた男が話し出した。ここのメンバーのリーダーなのか。
「アンタが仕切ることないだろ?」
先ほど呟いていた暗い目をした男が遮った。
「いや、しかし僕らには共通点があるわけだし・・・」
「共通点って何よ!いったいココはなんなのよ!」
金切り声が部屋に響き、部屋にいる全員が顔をしかめる。
「だいたい、ここになんで連れてこられたのか私にはぜんぜんわからない!」
小柄な、色の浅黒いその若いオンナはそうわめき散らす。
「ママぁ、おなかすいたぁ」
そのオンナの足元に小さい子供がすがりつく。
急に母性を刺激されたのか、その女は落ち着きを取り戻したかのようにその子供を抱き寄せる。
「ママだって、おなかすいたんだから・・・はやくおウチに帰りたいね・・・」
「たくッ!なんだよ、ここは!?おい!?誰か知らねぇのか!!?」
部屋の隅でうずくまっていたスキンヘッドの男が悪態をつく。
「あ、あの、解らないのはみんな同じなんだし・・・そもそも、僕たちは別々の場所に居た。これはみんな同じだよね?」
リーダー気取りの男が焦りを押し隠すようにゆっくりと話し出した。
「あぁん?んじゃおめぇなんか知ってんのかよ?」
あわててそのヒゲの男は言葉を継ぐ。
「あ、いや、知ってるワケじゃないんだけど、さっき少しここに居る人たちとしゃべった時、一つの共通点に気付いたんだ?」
「共通点?」
正面の茶髪の少女が顔を上げた。
「そう、共通点。僕たちはここに連れて・・・どうやってかはわからないけど、このどこかのマンションの一室みたいな部屋に強制的に連れてこらられた。これが共通点。」
「んなもん、見りゃわかんだろ、タコ!」
スキンヘッドの男が怒鳴る。
「ママァ、怖いよぉ」
5歳くらいの男の子が浅黒い小柄な母親らしき女に顔をうずめる。
「ちょっとアンタ、大きい声出すのやめなさいよ!子供が怖がるじゃないのよ!・・・ね?怖くないからね〜?」
「んだと!?ババァ!」
スキンヘッドが立ち上がろうとすると、
「いや、それだけじゃないんだ、共通点は」
「?」
全員がヒゲの男に注目した。
「僕たちのもう一つの共通点。それはここに来る・・連れてこられる前に『死んだ』ってこと。」
それまで一言も発していなかったパジャマ姿の初老の男性が言葉を挟んだ。
「なるほどね。それで・・・オレはとうとう死んだのか」
みんな、その言葉を聴いた途端、押し黙った。
ヒゲは周りを見回すようにして話を続けた。
「ここに来た僕たちはここに来る前に一度死んだ。それが何故だか生き返ってここに連れてこられたんだ」
「おかしいじゃない!私は死んでなんかいない!」
さっきまで泣いていたのか、目を腫らした20代くらいの白衣の女が叫んだ。
「で、でも、そこのオンナのコは手首を切って自殺を図ったらしいし・・・」
ヒゲが茶髪少女を指差すと少女はバツが悪そうに顔を背けた。
「それにそこの君だって車に轢かれたって・・・」
眼鏡をかけた若い男は黙ったままだった。
「それに僕も実は会社帰りにスクーターで事故っちゃってね、へへ」
「やっぱり、変よ」
親子連れの女が呟いた。
「へ?」
「だって、アタシたちはこのコを幼稚園から連れてクルマで帰る途中、高速で渋滞に巻き込まれただけd・・・あっ!」
「何が”あっ”なんです?」
「そういえば、後ろからでかいトラックがバックミラーでスゴイ勢いで近づいてきたのが見えたような・・・」
満足そうに頷くヒゲが何かを言おうとした時、ソレは聞こえてきた。
それは女性のコーラスのような歌だった。
「えっ?何、なんなの??」
どこかで聞いたような歌だが・・・一体・・・?。
「あ、あたしコレ知ってる、確か最近始まったアニメの・・・えーっとなんとかっていうほら・・・パソコンみたいな」
茶髪少女はこの曲を知っているようだった。
皆が呆然とその音源を確かめようと部屋を見まわしていると、何処からか小さい犬がカチャカチャとフローリングを鳴らしながら歩いてきた。
「カワイー!」
白衣のオンナが先ほどまで泣いていたとは思えない黄色い声を出す。
「この犬、ボク知ってるぅ、ういぅっしゅこーぎーだよぉ」
子供が犬に駆け寄る。
「気安く近づくんじゃねぇ!ガキが!」
子供は急に体を強張らせて立ち止まる。
「えっ、ちょっと今の誰?」
誰もがその声の主が見えなかったようだ。
「ばぁか!すぐそこに居るだろ、これだからボンクラどもは死ぬんだよ!」
「おい、マイクか!どこにスピーカーがある!おい!聞こえんてんだろ!?」
スキンヘッドが部屋中を駆け周りながら叫んだ。
「ぅっせぇ!ハゲ!でけぇ声出すな!目の前にいるだろ、馬鹿」
もしやと皆が部屋の中央に鎮座する"お犬様"に視線を集める。
「ま、まさかね・・・」
「そのまさかだよ」
(!?)
イ、犬がしゃべってる?
しかし、位置からして声の主はそこにしか居ない。必然的にその犬がしゃべっているとしか考えられないのだ。
「犬がしゃべる?マイクロスピーカーでもつけてあるんじゃ・・・」
「おめぇらは死んだ。その命をどう使おうとこっちの勝手なわけだ」
完全にその言葉と犬の口の動きはシンクロしていた。信じられない。が、夢を見ている感覚ではなかった。
「そこでだ、おまえらには一つ働いてもらう。生き返らせてもらった恩返しとしてな・・・」
「ちょっと待ってよ!」
白衣の女が割って入る。
「そりゃ、そこの人やそこの親子やひげの人は死んだかもしれないけど、私はスパのマッサージの仕事中に休憩してただけで何も・・・」
「あぁゴチャゴチャうるせぇな!人が話している時は口挟むなって教わんなかったか!」
お前、犬だろ。
心の中で皆いっせいに突っ込んだが、それはその"犬"に伝わるハズもなかった。
「とにかく、お前らは全員死んだんだ。んでそのクソの役にも立たん命を蘇らせてもらった代わりにお前らは仕事をしなきゃならない。それは」
「うぉおおお、ワケわkんねーーこんな犬なんかに!ちくそぉーーー!!!」
スキンヘッドが犬に向かって突然走り出した。それは一瞬だった。
シュンッ!
何が起きたのかその時は解らなかった。
「いてぇぇぇえええええ!!!!」
見ると、一瞬前まで犬を蹴飛ばそうとしていたスキンヘッドが右手を抱えながらうずくまっていた。
右手首から先が・・・ない!
「チッ、これだからゆとりは・・・。止血してもらえただけでも感謝しやがれっての。それにオレの名前は”イヌ”じゃねぇ!しなもんってんだ!」
そう言うと、”しなもん”は前足で何かを招くように掻いた。
ぶぉん。
突然、目の前に黒い玉が現れた。
「なっ・・!」
部屋中の人間が唾を飲み込む音が響いた。
「これは、通称”アコギ”。これにお前らがこれから特攻してもらうターゲットが表示されるわけだ。まぁ見てろ」
再び、しなもんが前足を動かすと1mほどの大きさのその黒い玉に何かが映し出された。

星人名:小池ボブ夫
アドレス:ttp://blog.zoo.ne.jp/koikebobuo/
炎上リミット:45ふん

「何これ?」
茶髪少女がいつの間にか黒い玉の前にしゃがみ込みながらしなもんに話かける。
「”何これ”じゃぁねぇだろ?”コレはなんでございますか?しなもん様”だろ?、まぁいい。最初だから教えといてやる。これはなぁ、お前らがこれからネットイナゴとしてつっこんでもらうターゲットだ」
ネットイナゴ?何ですか、ソレ?」
「あ、もしかしてソレって・・・」
ヒゲが親子連れの母親に視線を向ける。
「どうぞ、言ってください」
「あの、もしかしてSBMって奴でネガティブコメントをつける・・・ってことなの?」
しなもんがその母親に振り返る。
「その通りだ!なんだ、知ってんじゃねぇか」
「いや、その、前、ブログとかやってたから・・・」
「それじゃぁ話が早い。これからお前らはそれぞれネカフェに転送される。そこでこのターゲットにネガティブコメントをつけてブログを炎上させるんだ」
「あたし、よくわかんなーい。携帯しか触ったことないし」
そう呟いた少女に犬が・・・しなもんが今にも噛み付くような視線を向ける。
「あぁん?今更できねぇとは言わせネぇぞ!だいたいはてブは携帯からでも」
「うわぁなん、なんだ・・!!」
ヒゲの男が突如叫ぶ。見ると、ヒゲの頭が半分消えている・・・・!?
「お、もう始まったか、んじゃ転送されたらよろしくな」
「ちょっと待ってくれ」
今度は暗い目をした若い男が転送され始めていた。
「おれ、俺たちは、行った先で何を」
「おめぇ聞いてなかったのか、今までの話を?だから、はてブでネガ米つけて炎上させりゃいいんだよ」
「も、もし、それができなかったら・・・?」
突然、視界が半分消え、新しい視界が開き始めた。どうやらしなもんが宣言してた通り、どこかのネカフェのようだ。だが、まだマンションでのしなもんの声は聞こえている。
「あん?できなかったらだぁ?そりゃぁ、おまいら全員s」
途中で何も聞こえなくなった。どうやら転送が完了したようだ。
再び、呆然としながらも薄暗い個室の中で、ボクは目の前のディスプレイを見つめながらゆっくりとキーボードに手を伸ばした。
あの暗闇から見えた、眩い光を放つ、先頭車両が近づいてくる轟音を思い出しながら・・・。

ビリーはそんなこと言わない

世の中には2種類の人間しかいない。
自分を変えたいと願いながらも実行しない人間と、変わったと錯覚している人間だ
                                  - ビリー・ブランクス